落し物の視界
落し物が好きだ。
なぜ好きかを突き詰めていくと、見過ごされるものへの共感、という結論になった。
所有者の不注意で失せ物になり放って置かれる姿に、なりたくてなったわけでない苦労をしてきた自分を重ねているのだろう、という見立てである。どこまでも過去の自分が追いかけてくるのは、ほんとうにうっとおしいなあとしばしば思う。だからといって容易に辞められもしない。
落し物は、誰に拾われるでもなく、草むらや道路や道の端で、ただじっと身を潜めている。いつか回収される見込みもないし、ご主人様はきっと戻ってこないだろう。そういう諦念と、まあ騒いでも仕方ないしという達観とで、ぼんやりと風景を見ているように見える。その感じが好きだ。半分諦めながらも、自分のペースで世界に馴染んでいる、生命力のようなものを感じて好きだ。
というわけで、落し物を見つけると写真を撮ったり、心の琴線に触れるものであれば持ち帰ったりしている。完全に不審者である。上の絵は、つい最近拾った何かの部品で、世の中にはこんな大学生もいるのだということで落ちにしたい。