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大学を休んでいる間、サボらないための日記

絶対に忘れないと決めたことはすぐ忘れるくせに

 わたしは物忘れをよくする。

 正確には、脈絡のない事実をすぐに忘れる。例えば、人の名前や、理不尽なルールなど。不意に湧いて出てきたもの、マニュアル化されたものほど忘れやすい傾向にある。

 

 これは小さい頃からで、その頃の私は、幼いながらも、このままではいけないと思っていた。その焦燥感だけはよく覚えている。小学生が感じる焦燥ってなんだよという感じだが、子供の焦りというのは深刻になりやすい。特に私は、机に置いたはずのものが見つけられなかったり、先生の名前を全然覚えられなかったりと、「私は頭が悪いのだろうか……」と感じる出来事が多々あったため、不安もひとしおだった。わたしの未来は真っ暗だあ。と、明確に思っていたわけではないが、自分は人に比べて劣っているのだなあと感じるには十分だった。言葉もうまく話せなかったし。

 

 小さい頃、色んなものが新鮮だった。驚くこと、楽しいことに出会ったとき、「よし、絶対にこれを忘れないでおこう!」と決意する。しかし、気がつくとその決意だけが残り、さて自分は何に感動したのだっけとなることがよくあった。

 

 そんな自分にうんざりしていたのだろう。ある花火大会の夜、帰りの道が車で渋滞していた。私が乗る車も坂道で止まっていて、わたしは歩いて帰った方が早かったな、と思っていた。窓の外を見ると、坂道を自転車で登っていく男の子がいた。

 その時、理由もなく、わたしはこれだけは絶対に忘れないでおこうと決めた。そして、それから十年以上たった今でも覚えている。その光景を明確に思い出すことができる。

 

 私が異常な記憶力を発揮した数少ない一回がこの思い出である。人の記憶力は恣意的で面白い。その光景を覚えていられたことが、当時の私にとって自信に繋がったのか、それは覚えていない。