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大学を休んでいる間、サボらないための日記

未来言語への第一歩 その1

 去年の秋頃、新宿で行われた未来言語ワークショップというものに参加した。それについてずっと反芻していて、ようやくはっきりとした言葉で語れそうなので、レポートを書いてみる。私の初れぽ、あなたに捧げます。

 

 未来言語とは、「どんな人でも理解可能なコミュニケーション」を可能にする。その種は、視覚障害聴覚障害・知的障害・外国人といった、いわゆるマイノリティの人々の中に眠っている。これは私が卒業研究のテーマにしようとしている、インクルーシブデザインの文脈に則ったものである。『どもる体』の著者・伊藤亜紗さんがこのワークショップに参加されるということもあり、私は(確か)11月某日、新宿に赴いた。

 

 参加者は大体30人弱ぐらい。6~7人のグループに分かれて、ワークショップを行った。

 

 最初に行ったのは、しりとりだ。しかし普通のしりとりではない。参加者はゲームの前に、聴こえない・見えない・喋れない、の三つの役割が書かれたカードを引いて、それぞれの属性を決める。そして、自分が引いたカードに書かれた役割を演じながら、しりとりをする。聴こえない、カードを引いた人は、耳栓をする。見えない、カードを引いた人は、アイマスクをする。喋れない、カードを引いた人は、マスクをするといった具合だ。

 

 しりとりは役目を変えて2セット行われた。私は二回とも見えない、役だった。薄々分かっていたけれど、喋れない人と見えない人の組み合わせが一番コミュニケーションが難しい。視覚の影響が強力なことは分かっていたが、聴覚も同じくらいに強い力を持っていると初めて実感した。逆にいうと、その両方がなくなればコミュニケーションがとても難しくなる。

 

 次のお題は、その気づきに挑戦するようなものだった。耳栓とマスクとアイマスクをした人に対して、ある単語を伝えるというものだ。チームの一人がヘレン・ケラー役になり、残りの人々で協力して単語を伝える。お題の単語は、「餅つき」だった。

 

 単語の意味を伝えようと悪戦苦闘している最中に、これはデザインする過程と同じことをしているな、と感じた。つまり、コミュニケーションの核の要素を見極めて、それを相手に適切に伝える、そのために頭をひねって考える、という手順である。我々は「餅つき」という単語を伝えるために、相手の腕を持って振り下ろしながら床を蹴る(餅をつく腕の動作と、それによる振動)というアクションをした。それは、相手が持っているであろう「餅つき」のイメージを抽出し、的確に伝える意図のもと行われた。結果、単語は伝わらなかった。しかし、私は未来言語とデザインの共通要素を見出して、なんだ私が普段やっていることと変わらない、これはいけるぞ、などと思っていた。

 

 しかし、最後のお題で私の自負はくじかれた。最後のお題は、聴こえない見えない話せない人同士で、ある文章を伝えあうというものだった。お題は、「新しいスマホを店で買う」。相手の手に指で文字を書くのはNG、すべてジャスチャーなどで伝えなければいけない。

 言葉にすれば一瞬で伝わるこの文章、ヘレン・ケラー状態だとどれほど難しいか分かりますか。この難しさを体感するにはやってみるのが一番早いと思うので、ぜひチャレンジしてほしい。私はお題を伝える側で参加してみたのだが、面白いぐらいできなかった。「スマホ」しか伝えられなかった。相手にとっての「新しい」は何で示せるのか?それを伝えるにはどうすればいいのか?などと試行錯誤しているうちに時間切れになった(唯一伝わった「スマホ」は、スワイプの動作を何回もしていたら分かってもらえたので、ジョブズの偉大さを再確認した)。

 

このWSで感じたことを箇条書きでまとめる

1未来言語は、コミュニケーションの核を見極めるいい訓練になる

2同じ体験をしたことがあるなど、共通の文脈があればあるほど伝わりやすい

3未来言語のようなコミュニケーション方法は、とても原始的だ

4世界中の人々に共通の文脈を持たせたスマホジョブズは偉大だ

 

後半に続く